とある男女の女性視点話・HL
【製作日】2023年2月
以下追記
◇◇◇
私には好きな人がいる。しかし、その人は恐ろしい炎の魔法を持っていた。私と視線を合わせれば、彼はにっこりと笑って私に魔法をかけるのだ。
「好きだよ」
たった4文字の呪文。その一言で、私は彼に溶かされていく。外側は人間の形状を保っているものの、内側は彼の魔法による火が灯され、熱によって崩していく。
まるで、氷から水になるように、固まっていた私の心を溶かそうとする。
この魔法はとても厄介だ。私の全身を容赦なく熱くし、体温の限界値を越えて私の体を焼きつくそうとする。これだけでも耐えるのに精一杯ないのに、彼はさらに魔法をかけるのだ。
「かわいいね」
先程とは異なる呪文。彼は私の内側で燃え続ける火に燃料となる魔力を注いだのだ。呪文で強化された火は威力を増し、完全に溶かされぬように耐え続ける私に一刻も早くとどめを刺そうと襲ってくる。
ああ、暑い。ああ、熱い。なにもかもがあつい
あつさで苦しむ私を、彼は笑顔のままで見続ける。どうも彼には私の状況が伝わっていないようだ。いや、もしかしたら、本当はわかっているのだけど、あえて助けずに楽しんで眺めているのかもしれない。
なんて恐ろしい男(ひと)だろう。でも、私はそんなあなたに惚れた。あなたの私に向ける笑顔がとても好きなのだ。
彼も彼なら、私も私だ。苦しいのなら自ら「助けて」と言えばいいのに。しかし、この笑顔を見られるのなら、この苦痛だって喜んで受け入れられる。でも、だからいっそ、この苦しみを快楽に変えて溶かされてしまいたい。
「ねえ。お願いがあるのだけど」
「なんだい?」
私は彼との視線を外さぬまま、願望を言った。
「私にキスをして……」
(私を溶かすのなら、呪文ではなく、あなたの体温でドロドロにして)
後半の言葉も言おうと思ったのだけど、それは彼の唇によって封じられてしまった。
そしてそのまま、彼は自分の唇から直接私の体内へ魔力を注ぎ込んだ。たくさんの魔力を注がれる度に炎はどんどんどんどん大きくなる。
一体彼は私をどうしたいのだろう。業火にして私を体ごと焼き尽くしたいのだろうか。しかし、先程までは苦しかったこのあつさが、今では気持ちよく感じてしまう。むしろ、「もっと欲しい」と思うまでに求めてしまっている。
もしも、このあつさをこのまま受け入れ続ければ、私は本当に焼き尽くされてしまうだろう。でも、彼が魔法で私に与える苦しみを快楽に変えたのなら……
(ああ、もう、あつい……)
私は彼に全てを委ねることにし、体内の炎に身を捧げた。
(どうか、願いが叶いますように……)
苦しみと心地よさの両方が混じるあつさを感じながら溶けていった。
おわり
◇◇◇◇◇◇