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亡き人への問いㅤ

戦国BASARA
3設定の幸村と南部さんの話。
自己解釈による捏造が多いです。
過去作のリメイク・以下追記

◇◇◇
◇◇◇

ある日のこと、真田幸村はある目的により甲斐より遠い所へ馬に乗ってやって来た。そこは

「ここが……恐山……」

最北端にある霊場・恐山であった。
馬に乗っていた幸村は黒い地面へ降り辺りを見渡すと、卒塔婆と思われるものが立ててあれば、風車は微かな風に回され音を響かせ、道沿いには屍が転がっていた。

「なんて……不気味な所だ……」

甲斐では見たことのないこの世のもとのは思えない景色に、幸村はしばらく何も言えずにボーッと立っていた。
すると、誰かが声をかけてきた。

「ここへ何用だ?」
「!」

声が聞こえた方向へ向くと、右目を布で覆った老人がいた。

「そなたは?」
「南部晴政と申す」
「おお!そなたが南部殿か!某は「真田幸村であろう?」

幸村が名乗る前に南部は名前を言い当てた。初対面のはずの人物に先に自分の名を言われたことに幸村は驚愕した。

「な!?なぜ某の名を!?」
「お主の守護霊が教えてくれた」
「しゅ、守護霊……で、ござるか?」

幸村は自分の周りを見る。しかし、南部と屍以外の人物は見当たらない。
不安な表情の幸村に南部は左目を指して説明した。

「お主の目には映らぬだろうがわしには見える。真田家の先祖がな。
しかし……何やら心配そうな顔をしておる。お主、心当たりは?」
「……噂は誠なのだな……」
「噂?」
「あ……その……」

幸村はなぜか言葉を詰まらせて質問に答えようとしない。しかし、南部は目を閉じて「ホウ、ホウ……」と頷いた。

「南部殿?」
「ふむ……」

南部は目を開けると、幸村と視線を合わせた。

「『噂』というのはわしの亡者を操る力のことか。それ目当てにここへ来た、と」
「……まさか……今、某の守護霊と話されていたのか?」
「その通り」
「ああ……」

幸村は申し訳なさそうに目を閉じるが、先程の質問にはまだ答えていない。
南部は俯く幸村にゆっくりな口調で説得した。

「お主の先祖はお主の名とここに来た理由を教えてくれたが、肝心の用件は話さなかった。先祖曰く『自分の口から言え』とのことだ。
真田、お主が言わなければわしもわからぬ。素直に話したまわれ」
「……承知致した」

南部からの説得に幸村は顔を上げて覚悟を決めた。

「南部殿。貴殿にお頼み申したいことがある」

幸村は拳を胸に当てて話した。

「今、我が武田軍の御大将であるお館様がご病気で休まれている。某は療養中のお館様から代わりに軍を指示しなければならなくなった。
しかし……恥ずかしながら、某は自分で何を行えばいいのかわからないのだ。
元々は師であるお館様の下で行動をしていた某だが、師の意思を継いで軍を動かすのは難しく、皆の者をどう上手く先導するかで自信を無くしてしまったのだ」
「ホウ、ホウ……それで、わしにできることと言うのは?」
「今の幸村は『何をどうすればよいのか』。我が御先祖に伺いたいのだ」

幸村は真剣な眼差しを南部に向けた。

「某には亡き人物と話すことはできない。しかし、死者を呼び出せる南部殿なら可能かとこの地へ参った。
南部殿を通して、代々武田軍に仕えた御先祖から助言を戴きたい。これが、某の目的でござる」
「なるほど」

南部はしばらく幸村の顔をじっと見た。

「……その前に」

南部は右手を開くと、ポッと一つの魂が現れた。

「それは……まさか!?」
「そこに入られよ」

南部は左手で近くにあった兵士の屍を指すと、右手に浮かんでいた魂は手から離れて兵士の屍に溶け込むように入った。すると

「うう……お、呼び……ですか?」

屍のはずの兵士がゆっくりと立ち上がった。

「ぬわあ!?」

幸村は思わず驚いて尻餅を着いたが、南部は平然と兵士と会話をした。

「これを渡すので買って来てほしい」
「はい……承知しました……」

兵士は南部に命じられると、ゆっくりと歩きながらどこかへ行ってしまった。

「い、行かれました……ぞ?何を買うのだ?」
「こちらの事情よ」

南部は座り込んだままの幸村に向いた。

「来たれ真田。わしについてたまわれ」
「南部殿!?某の頼み事を聞いて下さるのか!?」
「左様」
「ありがたいでござる!」

幸村はすぐに立ち上がり南部の後ろをついて行った。
しばらくすると開けた場所へ案内された。

「ここでよい」

前を歩いていた南部は後ろにいる幸村へ向いた。

「南部殿、某は何をすれば……」
「お主は何もせずにじっとしとれ。それでよい」

南部は幸村に近づくと、視線をじっと合わせた。

「今、伺う」
「は、はあ……」

幸村は口と目を閉じて先祖からの答えを待った。

「……ホウ、ホウ……」
「…………」

南部と守護霊である先祖が話すなか、幸村に緊張がはしる。

「うむ。聞き終わった」
「むっ?早いのだな」

南部の終了の合図に幸村は目を開けた。長時間かかると予想していたので「意外だな」と思っていると

「真田、『自分で考えろ』」
「へっ?」
「それが先祖からのお答えだ」

南部は率直に結果を伝えたのだった。

「……自分で、考えろ?」
「確かにそう言った」
「自分で……考え、ろ……」

幸村はもう一度南部に確認すると、ゆっくりと復唱した。すると

「なんだとー!!??」

頭を抱えて大声で叫んだ。予想とは違う答えが返ってきて信じられないのだろう。
幸村は一気に叫んだせいで力が抜けたのか、その場で膝から崩れ落ちては手を地面につけば、俯いて呆然としてしまった。

「そ……そんな……自分で、考えろ……だと!?自分で考えてもわかぬから、お知恵をお借りしたくてここまで来たというのに!!」
「落ち込むでない。むしろ良いお答えよ」
「どういうことでござるか!?」

予想外の答えを受け止められずにいる幸村は勢いよく顔を上げると、怒り気味で南部を睨み付けた。
しかし、そんな幸村に南部は態度を変えること無く、先祖からの助言をゆっくりと噛み砕いて説明した。

「今、お主は様々な悩み事の中で迷っているようだが、武田と堅い師弟の関係にあるお主なら、そこから抜け出して皆を導くことができるであろう。
なぜなら、お主は一番師の傍にいた輩であり、既に少しずつ自分で考えて動いてるのだから……。
そのままこの先をゆけば、武田のような立派な武将に成長するであろう……」
「某は……もうそのようなことを?しかし、自ら進んで動いたことなど身に覚えが無いのだが……」 
「先祖への意見を求めるためにわしの所へ来た。これは真田が誰かに言われた訳でもなく、自分で決めたことであろう?」
「はっ!そ、そういえば……!」
「そして……ある戦では、自軍が窮地に追い込まれていたところを、自ら特攻して形勢を逆転したそうだな」
「う……しかし、それは、佐助に叱られて……」
「確かに話を聞く限り、お主は無理をしたようだな。その『佐助』という者は、お主を心配したためにあえて咎めたのだろう。
だが、武田軍を救ったことに違いは無い。お主のやったことは間違っておらぬ」
「!  間違って、ない……!!」 

目を見開いた幸村の表情に南部は少し笑った。

「お主はわしに聞かずとも、しっかりと自分の力で前に進んでいる訳よ」 
「……南部殿、つかぬことをお聞き致すが、某の『先祖』というのは、一体どなたでござるか?」

幸村の質問に南部ははっきりと答えた。

「お主の父親よ」
「!! う……ち、父上……!!」 

「父親」という言葉に幸村は涙を流しそうになった。しかし、涙腺をぐっと堪えて立ち上がり、一つの決意を表明した。

「この幸村……自ら進んでお館様のような虎となり、皆と共にこの世を翔け抜けますぞ……!」
「お主を先頭に同士はついてゆく。真田、決してくじけることのないように」
「はい!!」

南部から激励の言葉をもらうと

「ただ今……戻って参りました」

兵士がひょっこりと戻って来た。片手には小さな包みを持っていた。

「こちら、お渡しします」

包みを渡された南部は「ご苦労」と労うと、左手の指を構えた。

「休まれるか?」
「はい……」
「よかろう」

左手で構えながらブツブツと何かを唱える。すると、立っていた兵士はバタンと倒れた。

「ぬっ……!」

幸村は思わず視線を反らした。倒れた兵士の屍から魂が出てきてスーっと天に昇っていった。

「む~……某には、どうも今の光景が慣れそうにないな……」
「わしにとっては見慣れた光景よ」

南部は幸村に包みを差し出した。

「みやげよ。持っていかれい」
「なんと!よいのでござるか?しかし、そのようなものはこちらがするものでは……」 
「甘い団子だが」
「!!」

『団子』という言葉に幸村の目が輝いた。しかし

「まあいらぬのなら、わしが頂こう」

南部が包みを下げようとしたので、幸村は慌てて両手を前に出した。

「あ!いや……お、お待ち下され!い、頂きますぞ!!」
「素直に受け取れい」

南部は幸村の手のひらに包みを置いて渡した。

「おお!この匂いは、正しく団子……!!」
「父親からお主の好物を聞いた。それをお主にあげよう」
「本当に良いのでござるか?」
「お主のために買ったものだ。遠慮するでない」
「ん?某の、ため……?」

南部の「お主のため」という発言に、幸村は不思議そうな目で尋ねた。

「南部殿、失礼を承知の上でお聞き致す。なぜ……某に、ここまでして下さるのだ?」

幸村の疑問に南部は「ホウ、ホウ……」と呟いてから答えた。

「今のお主を見ていると、少々根を詰めすぎている様子だからな。師のためとは言え、限界はある。限界を越えて自身も倒れては意味がない。
団子はそんな張り切っているお主へのちょっとした褒美よ。時にはしっかり休んでゆかれ」
「南部殿……!ありがたき幸せでござる!!」

南部からの思いがけない褒美に幸村は心の底から嬉しく思い、感謝の言葉を述べた。
満面の笑みを浮かべる幸村に南部は何かを思ったのか、幸村の頭に手を伸ばして優しく撫でた。

「?  南部殿?」
「……お主のような若者を持つ武田が羨ましいわ……」
「お館様がいかがなされたか?」
「いや、気にするでない。真田、気をつけて帰りたまえ」
「はい!」

幸村と南部は来た道を戻った。

「此度は感謝致す!」
「またいつでも来たまえ」
「ええ!では、また会いましょうぞ!」

幸村が馬に乗って掛け声をかけると、馬は「ヒヒーン」と元気よく鳴いては勢いよく来た道を駆けていった。
南部は帰ってゆく幸村の後ろ姿を見届けた。その姿が完全に見えなくなると「やれやれ」と一息ついた。

「最初は威勢が無かったというのに、先程はすっかりやる気に満ちておった。
この先、どんな困難があろうと己の信念を貫き、立ち止まらぬ虎になるのだぞ」

南部は自信を取り戻した時の幸村を思い出した。その顔にわだかまりは無く、まっすぐ前に向いていた。

「今度真田が来る時は事前に団子を用意しなければ。手元が少し減るが……あやつの喜ぶ顔が見れるのであれば、まあ、良しとしよう」

どこか楽しそうな南部は「ホウ、ホウ」と呟やきながら戻って行った。


おわり

◇◇◇◇◇◇